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(2015/06/18)

“無”のような“集中した時間”~NHKラジオ『ポルトガル語入門』『まいにちイタリア語・入門編』作曲しました~

今年もNHKの番組音楽を、作曲・音楽制作させていただきました。 昨年はテレビ番組の音楽で、その制作秘話もここのエッセイ欄に書きましたが、今年はラジオ番組です。全編にわたり、私の“音”が使われています。

NHK-AMラジオ『ポルトガル語入門』と『まいにちイタリア語・入門編』(2015年度版)。 これら2番組のオープニング・テーマソング~BMG~エンディング・ソングなど、いろんな音楽を提供しました。

このうち『ポルトガル語入門』は、この春からすでに全国放送が始まっています。 そして、『まいにちイタリア語・入門編』は今年・下半期からの放送を控えています。

今回の作曲のお話をいただいたのは、さかのぼること、昨年2014年の12月。締め切りはそれから1ヶ月後の、今年の1月上旬でした。昨年末と言えば、“信州ジャズ”CDリリース・ツアー、クリスマス特別ライブなど、いろんな活動が重なっていたため、慌しい日々を送っていました。なので、その合間合間のほとんどの時間は、メロディの作曲、プレゼン用のデモ音源制作に費やしていました。 年が明けて今年のお正月も、お休み返上。番組担当者との“詰め”のやり取りは、レコーディング前日の深夜まで続くほどでした。

◆ ◆ ◆

レコーディングに参加してもらったのは、以下の豪華ミュージシャン。

バイオリンは、「平井景スペシャル“五重奏団”」でもお馴染みの帆足彩さん。バイオリンやビオラを三声くらい重ねてもらったり、贅沢なサウンドにしてもらいました。

アコースティック・ギターには越田太郎丸さん。ギター以外にも、マンドリン風の楽器、ブラジルの打楽器パンディエロなども演奏してもらい、ワールド・ミュージック的なサウンドには彼が必要です。

ピアノは、平原綾香さんのサポートなど、第一線で超多忙な扇谷研人さん。上手くスケジュールが合ってラッキーでした。ピアノ・ソロなんかもいろんなバージョンで録らせてもらったのですが、ずいぶん贅沢なラジオ音楽になるなぁ、って嬉しくなりました。

トロンボーンには、岩堀孝俊さん。20代の頃には大所帯ロックバンドのメンバーとして一緒にデビューしたこともあり、長年のお付合い。トロンボーンの音が入るだけで、なんとも温かい異国の雰囲気が出ます。

私はと言うと、現場でのディレクションはもちろん、ドラムスとベースとパーカッションを兼任。もうドタバタのように聞こえますが(実際、慌しいのですが)、私には完成した音楽のスケッチ(イメージ)がすでにかなりできていて、“やるべきこと”が大体見えていましたので、意外と楽しい時間でした。素晴らしい一流ミュージシャン達は、腕のみならず“勘”も“センス”も一流。そんな皆に助けてもらって、この“真剣勝負”の時間は、和やかに、スムースに進んでいきました。

こういう音楽制作の場合、以下のような段取りがあります。

【打ち合わせ】
番組の内容や必要とされている音楽を、なるべく詳しく聞きます。この時点で、かなりイメージが膨らむことが多いです。

【作曲】
とにかく“手がかり”が、少しでもあると助かります。映像に合わせる場合は、その実際の映像がもちろんあると最高。番組ではトークが音楽にかぶる場合、事前にその声もサンプルでもらったり、写真でも何でも、すべて作曲の助けになります。秒数が決まっていることが多いので、時計も傍らに。あとは、ひたすら鼻歌。一見ボケーっとした“無”のような“集中した時間”を費やします。

【デモ音源】
こんな感じの曲はどうでしょう?って、数曲は提示する必要があるので、頭の中にあるメロディやサウンドを譜面に起こし、パソコンで打ち込み作業して、簡単なデモ音源を作ります。先方からの要望を聞いて、さらに変更・修正を加えて、GOサインが出るまで頑張るわけです。OKをもらえるまでドキドキの日々。OKがもらえたら、もうほとんどの仕事は終わったも同然です(気持ちの上では)。

【ミュージシャン、スタジオの手配】
音楽が具体化してきたら、適任のミュージシャンを探し、それをレコーディングするのに最適なスタジオも押さえます。私の周りのミュージシャンは、超多忙な人が多いので、スケジューリングは難航することも多々あります。

【レコーディング】
ここまでの準備が、“音に変わる瞬間”ですね。「はたして自分の曲と譜面で、上手くアンサンブルできるのか」これは音を出してみないと分からないので、一番緊張する瞬間でもあります。

【ミキシング&マスタリング】
録音した音をじっくり調整して、仕上がりに磨きをかけます。曲数や楽器の数にも寄りますが、結構時間がかかります。レコーディング・エンジニアさんとの共同作業ですね。

そして、ついには【納品】です。

今回もこの最終工程には、NHK担当者さんも立ち合ってもらい、オープニングからエンディングまで、いろいろたくさんある“音”を、全てお渡しできましたのでした。ホッ。。 場面転換の短い1フレーズ。ピアノやギターのポロロン♪打楽器のカタカタ♪なんかも、我々が演奏していますよ。

「ラジオのBGMで、こんな良い音楽はもったい」と恐縮されていましたが、私もミュージシャンもエンジニアも、手を抜けと言われても抜けませんよね。今回集まってくれたミュージシャンも、驚くほど音の細部にまでこだわりました。

まだまだ勉強することばかりの私ですが、「短い音楽」を作ることにも、だいぶ慣れてきました。何もないところから音を創るのは、難しい、でも楽しいです。

それではここで、実際の曲をお聞かせしましょう。

興味ある方には、プレゼン用のデモ音源もどうぞ。

ここに番組講師のトークが乗っかると、どんな感じかは、放送を聞いてのお楽しみ。ただし、15分という短い番組ですので、曲の最初30秒がかかれば良い方です。

秋から放送の『まいにちイタリア語・入門編』の音源は、その放送時期がきたら、ここにアップしますので、それまでお待ちください。 特にこの「イタリア語」のオープニング曲は、私が自身のユニット「平井景スペシャル“五重奏団”」で演奏している「foresta」みたいな曲、とのオーダーでしたので、聞き比べてみるのも面白いと思います。

NHKの担当者の皆さんは、以前から私のライブへ足を運んでくださるので、「平井さんのあの曲みたいな感じ!」などと、自分自身の楽曲を引き合いに出してもらえるのは、とても嬉しいことです。 先日のライブへも大勢で駆けつけてくださって、「音楽のおかげで、毎日楽しく収録・編集が出来てます!」って声かけてもらったり。制作現場からの感想をいろいろ聞けるのは、本当に嬉しい限りです。産み落とした子が、自分の手から離れて、あっちの仕事場で頑張っているんだなーって、そんな気分です。

皆さんも、お時間ありましたら、是非聴いてやってください。

【放送情報】
NHK-AMラジオ『ポルトガル語入門
毎週土曜日、7:50~/18:30~/21:45~と3回ずつ放送されます。

『まいにちイタリア語・入門編』
今年度下半期、9月28日(月)からの放送です。
毎週月曜日、火曜日、水曜日の、8:45~/11:15~/16:45~の3回ずつ。
(木、金は応用編で、音楽は異なります)

【昨年のテレビ音楽の制作秘話はこちら】