(2011/03/18)
2011年3月11日
ここに何かメッセージを書きたいのに、どう書いていいのか、何を言ったらいいのかわからず、ぐるぐるといろんな想いが駆けめぐるだけ。何もできずに、ただただ疲れてしまう日が続いています。
震災から2日後、身近な人への安否確認だけならまだしも、急ぎでもない関係者さんへ数通の安否確認メールを送って、私は後悔しました。
「本当に過酷な状況だったら、身内でもない人間に返事するのさえ大変な手間だろう」と。
幸いにも、ご無事だとの返信もいただいており、とても嬉しく安堵しました。でも無事でない場合は、メールやインターネットなんてやってられないのです。
「結局、自己満足なのではないか」
「みんなが心配メールを送っているから、私も!と思ったのではないか。そんな”お祭り騒ぎ”の気分はなかったか。」
「後から冷たい人だと思われないように、他に同調して連絡したのではないか。」
自分が、もしくは他人が、ものすごく大変な状況になったときって、よくわからないけど熱くなりませんか? これが思いやりのない、独りよがりな方向へ向わないよう気をつけたいと思います。
私自身の安否も、全国のファンの皆さんにはご心配をおかけしていたようで、それを知った私は、自分の無事を公式サイトなどでお知らせしました。
被災地からも「無事です。がんばってます。」というメールを届けてくれるファンの方や関係者さんもおられ、これは本当に嬉しいお知らせで、心がジワーッと温かくなります。
こうやって公式サイトやライブ会場で、「自分はここにいる。」と旗を立てていることで良かったのかもしれません。「皆さんのことを、とても心配いるよ」という気持ちが、伝わる人に伝わればいいなと思います。
そして伝わった被災地の方のみならず全国の方には、ご無事や近況のお便りをいただけたら嬉しく思います。
◆◆◆
この東日本の大震災が起きてから、スティックを持てない日が続きました。
そんな中で一つのメロディが降りてきたことがあります。東北の人への応援歌にできないかと、がんばって曲を作り始めました。
でも途中から、最初の気持ちとは違う作為的な思考が入り込んでいることに気づきました。
「俺“も”、被災地を想う曲を書こう」
「被災者を応援するアーティストの仲間入りして高感度アップすることを、一握りでも意識してないか?」
「全国で歌って涙してもらえる応援歌を作って、それで売れることを考えてないか?」
なんか、、偽善的な感じがして、作曲を断念しました。
以前に書いた曲をポロポロと弾いてみて、さっきまで書いていた曲に比べると、とても純粋で心に触れた気がしました。
私はそんなにすぐに立ち上がって、創作活動ができるアーティストではないのかもしれません。
もし自分が、被災された方のように、大切な人、大切なモノ、大好きな場所を失ったらどうなるか。想像するにあまりあります。胸が痛すぎます。
自分も皆さんと同様に、ショックを受け、傷付いているのだと気づきました。
自分の中で、もっと消化して吸収して、じわっとにじみ出てくるまで、私はこの想いを作品にはできない気がします。もっと時間が必要です。でないと、なんか嘘になる気がするのです。
◆◆◆
「自分に何ができるのか」いろいろと考えさせられました。
自分が「音楽」で被災地を励まし応援できるのは、もう少し後ではないかと感じています。
大事なモノを失ったばかりの人に「頑張れ!」なんて言えないです。極寒を耐え、瀕死の状態の人に「明日があるさー」みたいな明るい歌は、どう響くのでしょう。
「励まし」が必要なのは、ライフラインが確保され、復旧がある程度なされた頃。テレビが取材しなくなった頃からではないでしょうか。その頃から被災者の目に見えにくい「心の復旧」が始まります。
無気力になった人が立ち上がる勇気。絶望から次の人生を考えるようになれる元気。それこそ「いい音楽」ができる応援ではないかと思います。
被災直後の今、我々ができることはとにかく義援金。お金はいくらあっても困りません。その援助の方法は、その道のプロ達の判断に任せるのが良いと思います。「自分でも何かできることはないか」と考えている方、しっかりした公式機関に寄付しませんか?
◆◆◆
人それぞれ、いろんな状況、考え方、想いがあるでしょうが、ミュージシャンである私は、やはりいつも通りやることが大事だと思います。
被災を逃れた人たちが元気に生活しなくては、人を元気にできないです。経済が回らない世の中では、支援もできないです。
少なくても自分主宰のライブは、いつも通り楽しく温かくやりたいと思います。お客さんが一人になっても、私はそこで音楽を奏でていたいです。
私のアルバム「SORA」と同時にリリースした映像作品DVD「In His Story」の最後では、こんなナレーションで自分の音楽観を締めくくっています。
「自分が何かを【響かせて】いれば、それが【響く】人に伝わる」
「【伝える】のではなく、【伝わる】ものなんだと思う」
今、自分がやれる音楽を、やれる場所で、精一杯に楽しんで演奏したいと思います。自分が心こめた「音」に、心響く人がいてくれますように。
そしていつか、傷ついた人たちにも響き、伝わり、癒される日が来ることを、心から願ってやみません。
私はこんな状況を、音楽でがんばろうと思います。
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