最近、北野たけしさんが出ているテレビ・コマーシャルの音楽で、
スガシカオさんが歌う『やつらの足音のバラード』を耳にする。
この曲にピピーンときて、懐かしく思った人は結構いるはず。
1974年〜76年にかけて放映されたテレビアニメ『はじめ人間ギャートルズ』のエンディング曲だ。
七歳前後だった私は、このアニメを好きでよく見ていた。
原始時代にのんびり暮らす家族を描いたドタバタ調コメディーが終わると、
このエンディング・テーマ。。。
幼心にジーンと沁みて、静止画とテロップだけの画面なのに、音楽を聴くために
最後までじーっと見ていたのを覚えている。
作曲はかまやつひろしさん。
カントリーミュージックの影響を強く受けているムッシュらしい、
ジメジメしない乾いた感じの素朴なバラード。最高!
アニメで使用された原曲もムッシュが歌っていると思っている人が多いが、それは違う。
当時、このアニメのシングルレコード(CDじゃないよ!)を買って聴いていたほど好きだった私の記憶には
ムッシュの声は残ってない。
で、調べてみると若子内悦郎さんという歌手が「ちのはじめ」という名前で録音したことが分かった。
因みに「サンダーマスク」や「帰ってきたウルトラマン」のテーマソングを歌ったのもこの方。
作詞はアニメの原作者でもある園山俊二さん。
この人がタダ者でないことは歌詞を読めば分かる。
やつらの足音のバラード
- 1)
- なんにもない なんにもない まったく なんにもない
- 生まれた 生まれた なにが生まれた
- 星がひとつ 暗い宇宙に 生まれた
- 星には夜があり そして朝が訪れた
- なんにもない 大地に ただ風が吹いてた
- 2)
- やがて 大地に 草が生え 樹が生え
- 海には アンモナイトが 生まれた
- 雲が流れ 時が流れ 流れた
- ブロントザウルスが ほろび イグアノドンが さかえた
- なんにもない 大空に ただ雲が流れた
- 3)
- 山が火を噴き 大地を 氷河がおおった
- マンモスの からだを 長い毛が おおった
- なんにもない 草原に かすかに
- やつらの足音がきこえた 地平線のかなたより
- マンモスのにおいとともに やつらが やってきた
- やってきた
なんなん??このでっかいでっかい詩は!!
「なんにもない」が何度も出てくるけど、同じ意味では使われていない。
「なんにもない」といっている景色がそれぞれ違い、そして変化していく!
はじめ「なんにもない」暗い宇宙に地球が生まれて、
「なんにもない」その地球にいろんな生命が生まれて
「なんにもない」空には雲と長ーい時間が流れて
「なんにもない」草原の向こうからやつらがやってくる。。。
この詩の景色を見る視点は一体どこにあるのだろう。
時間的には星が生まれる以前から始まっているので、
地球のどこかで見ていたものではない。
人間のことを「やつら」と表現するあたり、
我々の目線で書かれたものでもないことが分かる。
地球という”奇跡”を、時間的にも空間的にも、
でっかいでっかい愛で包みこんだ、そんなバラード。
私の「音楽の原体験」の一つは、確実にここにある。
もちろん、邦楽、洋楽、いろんなジャンルの音楽を聴いて育ったが、
こういう幼少時代にズンって入ってきたものって、
その後の感性の土台になっていることは否定できない。
私が作る曲も、結局こういう感動の蓄積から生まれてきているのが自分でも良く分かる。
それだけに、この曲をアレンジしたりして自分のライブで扱ったりするのは
私にとっては思い入れがありすぎて、まさに「禁じ手」。
以前、小泉今日子さんがこの曲を自分のアルバムで歌っていたが、
歌唱力の点からしてもご愛嬌な感じだった。。。
が、今回は私のお気に入りであるスガシカオさんが歌ってしまったということで鋭く反応したわけだ。
スガシカオ、CMで歌うかぁー、おいしすぎるやん、必殺やん、反則やー!(ブツブツ・・・)
でも、さすがスガシカオ。(←あれ、言いにくいぞ)
このヴァージョンもかっこいいな。
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「なーんにもない」っていいね。最近すごくそう思う。
なんでもある時代だからかな。
気取りも飾りも無理もなくて、しがらみも圧力も義務もなくて、、、
そう「なーんにもない」時間が流れる場所ってあるといいね。
人って「足していく」ことはできるけど、自分で「引く」ことは難しい。
一度プラスしたら、そこから捨てるっていうことはなかなかできない。
確かに少しずつでも前に歩くには努力が必要だけど、
ある程度進んだ所で立ち止まったり引き返したりっていうのも勇気がいるもんだ。
でも、そうしないといつかは「テンコ盛り」になってしまうね。
「なーんにもない」っていう感じが昔から心地良かった理由は、
この曲あたりにあることがいま分かった。
大きな愛に包まれた「なーんにもない」っていうのが、あったらいいね。