(2003/05/26)
小笠原日記 -その3-
第三日目 昨夜、居酒屋から帰った後も ペンションのテラスで夜更けまで飲んだにもかかわらず、 早起きして朝食をすませ、島めぐりに繰り出した。 私の弟子であり、今回はパーカッショニストとしてツアーに同行している タケシと二人で、原付バイクをレンタル。いざ出発! 午後2時から会場でのリハーサルが始まるから、 それまでしか時間は無い。少しでも父島を探索しよう。急げ! 舗装された道をバイクで走る場合、島の半分くらいを一周することになる。 島の周囲三分の一を海沿いに走り、そこから島を縦断する形で 山の山頂付近を通る。 遊歩道のようにバイクでは通れない道もたくさんあるが、 全てを見て歩くにはもっともっと時間が必要だ。 大まかにバイクで島の雰囲気だけでも感じたい。
二見港とおがさわら丸をバックに
美しい浜や海岸はあちらこちらで出くわす。 しかし、観光客目当ての商売をしている所はない。 どこも静かで人も少ない。 「境浦」は波穏やかな海岸で、沖合いには 沈船が見える。太平洋戦争時に魚雷攻撃を受け座礁した濱江丸が、 60年近い歳月を経て残っている。 静かで青く澄んだ海の中に、赤く錆び朽ちた座礁船。 何とも違和感があり、戦争の無惨さを感じずにはいられない。
「境浦」
この二人のバイクツアー。道はかなり走りやすい。 信号がなく、行き交う車もほとんどないこともあるが、 道路がかなりきれいに舗装されていている。 後で聞くと、公共事業が島の財政の重要な位置を占めるから、とのこと。 自然の中をバイクでブンブン飛ばすのは、最高だ!信号なんて一つも無い。 タケシと私は、海パンにTシャツ、サンダルに赤いヘルメットという、かなり怪しい格好で島中を走り回る。 「小港海岸」は海水浴には最高だ! 真っ白の砂浜が遠浅の海まで続く。 波も静かな入り江でコバルトブルーってこういう色なんだ。。。。 と思える素晴らしさ。 しかも、我々しかいないプライベート・ビーチ状態で そこを泳ぐ魚の群れを追っかけたりして。 このときは、鮫が出るのだということを忘れていた。(笑) もっと時間があったら、ここで一日中ボーっとしてたい。
山に入り、「中央山」へ向かう。 父島中央に位置する峰で標高319m。ほぼ最高峰。 展望台まで歩いて登るうち、どんどん霧が。 高射砲の台座が残る山頂からは周囲360度の景色が 広がる。。。。予定が、 霧で視界ゼロ。 島の天気の移り変わりが早いことに驚く。 「夜明道路」と呼ばれる適度な高低差のある山道を 気持ち良く走り、 途中「宇宙開発事業団・小笠原追跡所」の巨大パラボラアンテナを ちらりと見ながら、その先「夜明山」へ。 この辺りは少し寂しい雰囲気。 旧日本海軍の通信基地跡や首なし尊徳像があった。 この島には、素晴らしい自然とは著しく不釣合いな"戦争の傷跡"が あちらこちらに残っていることに気付く。 その悲しい歴史に胸が痛む。 山々が連なる父島の背骨を走っていくうち、北方で突然視界が広がる。 「長崎展望台」の高台から父島から小さく張り出した岬と海が見える。 絶景!に言葉を失う。 ここ、最高!!
島の北側の海を臨む
タケシとした、その絶景を拝みながらの立ちショOベOは、 "ブラザーの契り"と言ったところか。(島の人たち、ごめんなさい・・・) 月見の名所でもあるらしいが、夜一人で来るにはきっと怖いだろうなぁ。。 それから、山の斜面などでよく見かけたのが山羊。 昔、外から持ち込んだものが野生化したらしい。 可愛いし、思いがけぬ出会いに喜んだが、 地元の農家では繁殖のしすぎで害獣扱いらしい。 そうこうしているうちにリハが始まる時間が近づいてきた。 急いで戻らないと! 俺たち、父島に何しに来たの?という話になる。(苦笑) 山道をクネクネ降りていくと、ほどなく 我々の宿「パパス」がある大村地区へ戻ってきた。 島の人がこの辺りを「街」と呼んでいて、 最初は「ん?まち?静かだぞ?」と思ったが、 こうして島を巡ってみると 確かに一番街っぽい。 薬局も6時閉店のスーパーも ガソリンスタンドもある。 それぞれ島唯一らしいが。。。 宿はいくつかある。飲食店は思いのほか充実している。 各ジャンルの料理店が一件ずつはあるか。 本屋は無いそうだ。 バイクを返して、昼飯も忘れて巡った 約5時間のバイク・ツアーは終了! ウムウム!?体の中にエネルギーが充満してるぞ!! 少し日焼けした顔で、メンバーが集まる演奏会場へ。
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