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(2014/03/10)

平井景×大塚All in Fun“ジャム・セッション”1周年

「とにかく1年間は続けてみましょう。」

そんな言葉を交わして始まった“ジャム・セッション大会”。会場と私のコラボ・イベントとして、毎月第2火曜日に開催されています。場所は、東京・JR大塚駅からほど近いライブ&レストランの「All in Fun」。

※2015/05/13追記
平井景×All in Fun「ノンジャンル・ジャム・セッション」は、2015年5月12日を最終回として、終了させていただきました。これまでにご参加いただいた皆さん、そしてご協力いただいたミュージシャンの皆さん、本当にありがとうございました。

店長の森さんは“音楽”と“人”大好き人間で、それまで私が不定期で主宰していた「爆笑(笑)ジャム・セッション」の雰囲気がお店の方針にもピッタリなので、「ここで継続的にやりたい」と言ってくださいました。

人が人を呼んで“場”が定着していくためには、定期的に決まった曜日にするのがベストです。しかし、どこまで続けられるか、正直不安もありました。

毎月となると、スケジュール調整はもちろん、お客さんが増えていかないとなかなか難しい面もあります。お店の営業面でも成立するか未知にもかかわらず、「とにかく1年間やってみよう」という森さんの言葉は、私の背中を押し、力を与えてくれるものでした。

「“ジャム・セッション”ってなに??」

そう思っておられる方も多いかもしれませんね。通常のライブでは、あらかじめ出演メンバーが決まっており、選曲やリハーサルもした上で、その日にお客さまにお聴きいただきたい内容やコンセプトが存在するわけです。これはアマチュアのライブでもそういうものですよね。

一方、“ジャム・セッション”となると、その場で曲を用意し、即興的にアレンジしながら、主にミュージシャン同士の“音の交流”を目的としたものである、と言えます。

プロの現場でも、複数のバンドが参加しているロック・フェスティバルのような機会に、最後にミュージシャン勢ぞろいしてジャム・セッションすることがあります。

皆が知ってる曲を即興的にアレンジして演奏したり、アドリブ・ソロ合戦をしたり、そういう場面があったりしますよね。リハーサル中でも、誰かが適当に弾き出した曲に、メンバーがついていって、“音遊び”つまりジャム・セッションになることもあります。

ただ、ここでのジャムセッションは一味違います!

我々が行っている「平井景×大塚All in Fun“ジャム・セッション”」では、アマチュアさんの参加を念頭にしています。 かなりの腕前を披露される方もおられますし、まったくの初心者さん、楽器はできないので歌います、という方もバンバンとステージに上がって即席ライブをされています。

「初心者ばかりで演奏は成立するのか」と心配になるかもしれませんが、私もドラムで参加したり、ピアニストの江本翔くんも基本的にはいつも待機してくれているので、なんとかなるものです(笑)。 「メロディしか吹けません」って方も、上手いバンドの中に入ると、自分のテンションも上がり、「楽しいー!」ってなるんです。

何よりありがたいのは、プロミュージシャンが頻繁に集まってくれることです。いつも多くの20代の若手ミュージシャンが集い、私世代のミュージシャン仲間も何度も遊びに来てくれます。プロを目指す人の参加も回を重ねるごとに多くなりました。

そうなるとグッと演奏レベルも上がります。「そこに素人さんは入りにくい?」そんなことありません。上手い人と共演することで、ちゃんとした音楽になるのですから。プロ・アマ混合の演奏は、観ていても、とてもスリリングで楽しいものです。考えてもみたら、プロと共演できるなんて贅沢な機会ですよね。

そして、プロミュージシャンも、アマチュアの方の一生懸命さ、ドキドキ楽しそうな笑顔に触れることで、“音楽の原点”のようなものを感じ、刺激になったりするものです。

選曲は自由、ノンジャンルです

譜面もたくさん用意してますし、持参される方も多いです。ジャズのスタンダードだけでなく、ポップスの名曲とか、はたまた日本語の童謡まで。

これまで、ビートルズやカーペンターズ、ビリー・ジョエルにディープパープル、ポール・モーリア、美空ひばりにジブリ音楽、ユーミン、さらには童謡、七つの子、森のくまさん、それから、明治製菓チョコレートのCDソングまで。もう大ヒットパレードです(笑)。 もちろん、ジャズやブラジルの名曲など、たくさん練習して臨まれる方もおられます。そういう曲も歓迎ですので、腕に自信のある方もご安心ください(笑)。

それから、原曲通りに演奏するとは限りません。私がその場で、簡単なアレンジを提案してみたりしています。「このメンバーの組み合わせなら、レゲエ風にやったらおもしろいんじゃないか」とか、「“上を向いて歩こう”をファンク風にやってみよう」とか。名ドラマ“北の国から”のテーマ曲を持ってくる方もいて、それを原曲通りにやるにもバンド編成だと難しいですよね。それで、爽やかなサンバ風にやってみたら、これがとてもイイ感じになりました。

その時々のメンバーを見て、できそうなアレンジを提案するようにしています。なので、ラテンの曲を難しいと思う人がいても、「シンプルにこんな8ビートでやってもOKだよ」とちょっと演奏方法をアドバイスすることも多々あります。

また逆に、達者なピアニストやベーシスト、ドラマーなどがいたら、日本のポップスをラテン調でやってみたり。メロディーが初心者だとして、そのまま普通に歌ったり吹いたりしてもらっても、バンドがラテン風ならラテン曲みたいになって、それはそれで楽しい音楽になったりします。

三味線とのセッションになったこともありました。三味線は五線譜の楽譜を使わないのですが、それこそプロアマ混合でかっこいいファンク調の即興演奏になりました。ときにはフラダンスも登場します。“涙そうそう”やクリスマスソングで、バンドとダンスのセッションです。

こんな風に、老若男女、プロもアマチュアも、音楽ジャンルも多種多様のライブです。どんなレベルの人が参加されても、それなりに成立していくのがおもしろいなと思っています。

観客に見せる

一晩を通して観ているだけでも楽しいショーとなるように、曲順やアレンジ、メンバーの組合せを即席プロデュースするようにしています。そして、観ている皆さんにもステージ上の状況がわかるように、アレンジやアドバイス、曲解説も、なるべくマイクを通して行うように心がけています。

例えばこんな場面もよくあります。 ジャム・セッションだと、その場で初顔合わせで演奏することも、曲を知らないまま参加することもあるわけです。イントロからちょっとギクシャクしてて、歌が入ってもメンバー自身、しっくり来てない演奏になることもありますよね。そんなときは私、マイク持って「ごめんごめん、ちょーっとストップ!」って割り込んだりします(笑)。

「どうして、そうなっているのか」を私なりに説明し、「こういうこと気をつけて、もう一度、最初からいってみよう!」ってやり直し(笑)。

せっかくいい感じだったのに、エンディングで上手く呼吸が合わなかったりして、演奏者が悔しそうな顔して終わることもありますよね。そういうときも、こうしたら上手くいくとアドバイスして、後半からやり直し(笑)。

観客も、その演奏に「あれれ?」って思った理由がわかり、それから再度やり直したら、あら不思議。一目瞭然、ガラッと良くなる。

「ちょっとしたことで、こんなに音が変わるもの??」と驚いたり、感動したり、拍手喝采になったり。何より、その時の演奏者たちがそれなりに納得してステージを降りられるようにしたいのです。

まったく楽器を演奏しない方でも、「なるほど、そういう風に演奏ってしているのか!」と、観ているだけでもきっと楽しいはず。そういうこともあって、このジャム・セッションは、“観ているだけのお客さん率も高い”という珍しい現状が起きています。

そして、「ずっと観客として楽しんでいたけれど、このセッションなら、私も参加できるかも!」と奮起される方が多いのは、さらに嬉しいことです。人前で演奏するなんて、これまで想像もしてなかった方が、このセッションで“デビュー”を飾る。そんな場に立ち会えることは感動的です。お客さんも固唾を呑んで見守る場面も。

「この“デビュー”を目指してピアノ教室に通い始めました」という方もおられました。デビュー戦で、いきなり私と共演です!そういうことも、このセッションでは普通にあるわけです。

普段なかなか実現しない組合せのプロ演奏を見せる

新旧(?)プロミュージシャン同士の交流の場にもなっています。

1~2曲くらいは、プロだけの演奏も聴いてもらおうと思っています。そのときに遊びに来てくれたミュージシャンによっては、とても貴重な演奏になることもあります。初共演が実現したり、普段のライブではやらない編成だったり。「その場に居合わせたお客さんはラッキー!」という機会もあるかもしれませんね。

◆ ◆ ◆

この「平井景×大塚All in Fun“ジャム・セッション”」のスタートは、昨年2013年2月のことでした。そこから早1年! そんなこんなで、たくさんのお客さま、ミュージシャン仲間に集まっていただき、なんとか先月2月11日で第12回、1周年記念の日を大盛況のうちに終えることができました。

店長の森さん(下の写真右)、ホストピアニストを務めてくれる江本翔くん(同・左)とは、毎回のように、反省会や打ち合わせをして、よりスムースに、より楽しい会になるように意見交換してきました。別日にランチ・ミーティングしたこともあります。常に向上心を忘れない、本当に素晴らしい仲間だと思っています。

無事に1周年を終えたあとの、我々の喜びといったら! しみじみ、お店に足を運んでくださる皆さんに感謝の念が絶えません。

今月から2年目に突入。さらに、楽しんでまいりたいと思います。 皆さんがドキドキ、ワクワク、笑顔いっぱいで音楽を楽しまれる姿に、私もとても微笑ましくなります。「楽器を始めた頃は、こんな気持ちで楽しんでいたなー」って、“音楽の原点”を思い出させてもらっています。

「人前で演奏できて、その夜はなかなか眠れなかった」って感想も嬉しい。いつも、「あー、よく笑ったー」って、頬をマッサージしながら帰る方々(笑)を見送りながら、「また来月もお会いしましょう」って言葉を交わせるなんて、幸せなことですよね。

私はよく使う表現ですが・・・“継続は力”。このジャム・セッションでも、そんな想いを抱いています。